icon 未定

日時: 2017/07/28 13:19
名前: rok
情報: w0109-49-135-83-11.uqwimax.jp

「明日が来るなんて、誰が予想したんだろうか」

暗闇の中、一人、小さくつぶやいた。

「俺はこの世にいてよかったんだろうか」

誰も答えてくれない。

「そうだよな、もう、わかんねぇよな」

そのまま、赤く光る夕暮れの空に、もう誰の血なのかも分からないが、
真っ赤に染まった手を掲げた。

-なぁ、おれ、どうすればいいんだろう。
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Re: 未定( No.1 )

日時: 2017/07/28 13:19
名前: rok
情報: w0109-49-135-83-11.uqwimax.jp

「おはよう、有沢くん。」
「おはようございます。教官。」

今日は清々しく晴れていた。
雲一つない青空の下には、楽しげに笑う子どもたちや、
少し早めに酒を嗜むもの。また、自分と同じように仕事に勤しむもの。
さまざまな人間が見て取れた。

かくいう自分はというと、今日も任務をこなさなければならず、
暑苦しい軍服に身を包み、街を歩いていた。
そこに、自分の上司にあたる女性−安西・ルイナ・七海―(通称安西、もしくはルイナ)がやってきたのだった。

「教官は今から何か任務にあたるんですか?」

いつものように声をかけると、安西は手で口を覆いながら、くすくすと笑った。

「やめてよ、教官だなんて。もう同じ部隊の仲間でしょう?」

そう。安西は自分がいた政府直営の士官学校時代の教官だった。
卒業し、そのまま入隊したが、そこには安西が部隊を統べる隊長として在籍していた。

まったく、なんて偶然なのかと有沢は思っていた。

そんな有沢は苦笑いして、すみません、と答えた。

「どうしても抜けないんですよ。安西隊長は、自分が学生のころに一番お世話になった恩師ですから。」
「よく言うわねぇ。あなたはかなり優秀だったから、手を焼いた覚えは全くないよ?」
「いえいえ。未熟だった自分を引き上げてくださったのは、他でもない安西隊長です。」

士官学校生だったころ、有沢は大変だった。
家庭環境のせいにしても仕方のないところはあるが、
有沢は父子家庭だった。
どこにでもあるような暴力おやじで、母がいなくなってからというもの、
仕事などから持って帰ってきた苛立ちを、全て幼い有沢に向けた。

殴る、蹴るはもちろんのこと、食事は与えない、
雪の降る極寒の中、外に放り出されるー

人の悲しみを誘う本などでよく見るような、
くそみたいな家庭だったと、有沢は感じていた。

そんな有沢が16歳になると、おやじは言った。

「お前なんか学校に行っても無駄だ。おれと同じだからな。
そんな奴は家から出ていけ。面も見たくねえ。」

酒に酔ったおやじはそんなことを言ったのだと思う。
このあたりのことは、記憶にふたがかかったように思い出せない。
とにかく、身一つで追い出された有沢は行くあてもなく、
ただ、住み慣れた街を歩いていたのだった。

そのときだ。

「君、どうしたんだね?」

街の中央に位置する噴水広場にあるベンチに腰かけていると、上から明るい声が降ってきた。
億劫ながらも見上げた先には、一人の老いた男性が立っていた。

見知らぬ人間に話すことでもない、とそのまま視線を地面に戻すと、老人は少し笑ってから、有沢の隣に座った。

「若いもんが地面ばかり見ていてはいけないよ。
明るい未来があるんだから、前を見んとね。」

しゃがれた声だが、芯が通っていた。
有沢は地面を見たまま、はあ、と息を吐いた。

「明るい未来なんて、ありゃしねえよ。俺はこのまま」

このまま、死ぬしかない。
そんなことを言おうとした矢先に、自分の見つめていた地面が、少し、濡れているのが見えた。

―泣いていたのだ。

あぁ、俺はもう未来に希望さえ見いだせず、親に捨てられ、一人で、この街のどこかで死ぬんだろうな。

感じていた絶望にあふれた未来を改めて実感したときには、もう遅かった。
両目から大粒の涙がこぼれて、こぼれて仕方なかった。

横に座る老人は何も言わず、ただ、そうか、と優しい眼差しを有沢に向けた。

「私はローナード・ユンベル。
君に、未来を預けたいんだが、どうだろうか?」
「俺に、未来を?」

重たい視線を横の老人ーユンベル―に向けると、にっこりとほほ笑んだ顔で、有沢の頭をくしゃりと撫でた。

「君はいずれ、私を恨むかもしれない。
だが、私はこのときをずっと待っていたんだ。」

君が、私の隣に座る時をね。

そうつづけたあと、有沢に手を差し伸べ「さぁ」と言った。
その手に、言葉の意味も分からないまま、有沢は思わずつかんだのだった。


こうしたあと、有沢はユンベルの願いにより士官学校に入隊。
通常よりも少し遅い入学となったため、周囲には「転校してきた」ということで伝えていた。

「ほら、有沢!早く用意しないと、次の訓練にいけないよ!」
「はい!教官!」

ある程度の月日が経つと、父親による虐待でろくに食事も摂れなかった。
しかし、そんながりがりに痩せた体は、厳しい教官による訓練の成果もあってか、
以前とは比べ物にならないくらい逞しい体つきになっていた。

「しかし、君は転校してきて他の生徒よりも若干遅れているのに、もうここまでの成果を出すとは・・・何かやっていたの?」

安西は不思議そうな顔で聞いてきたのを、有沢はよく覚えていた。
訓練着に着替えながら、有沢は「いえ」と短く答えた。

「自分は特に何もしていません。ただ・・・」
「ただ?」

着替え終わった有沢は、少し照れくさそうに安西に視線を向けた。

「恩人に、じいちゃんに恩返しがしたくて」

安西は他の生徒と分け隔てることなく、ただ、真剣に有沢と向き合った。

そうする中でめきめきと成長し、なんと首席での卒業となった。
この時まで、有沢は常日頃に言っていた。

「安西教官は、私を、真剣に育ててくれました。」



「そんなことないわよ。私はただ、あなたの才能がうらやましくてね。
しっかり見ておかないと自分が追い抜かされそうで怖かっただけ。」

照れくさそうにそう言う安西の顔は、まんざらでもなくうれしそうだった。
そんな安西を見ると、有沢も自然を表情が綻んだ。
しかし、ここでこの表情を見られるのはまずい、と有沢は誤魔化し半分で腕時計に視線を移した。

すると、安西ははっとした顔になった。

「あ、ごめんごめん。任務行くところだったんだよね?」
「いえ、まだ集合まで時間があるので大丈夫ですが、教官は?」
「それだったらよかった。私もこれから別の任務があるから、もう租そろそろ行くね。
気を付けて。」

ありがとうございます、と伝えたところで安西は軽快な足取りで自分の先を歩いて行った。

自分はこれから、とある任務に向かうところだった。
その任務の内容はー

「さぁ、俺も行かないとな。」

有沢は少しだけ体を伸ばしたあと、安西の後をゆっくりと歩き出した。
今日は、少し長くなるかな―有沢は前を見る。


To be Countinued・・・・

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