このスレッドはロックされています。 記事の閲覧のみとなります。

icon 久遠の夢の涯―――Us of 20 years ago―――

日時: 2007/11/18 20:37
名前: 那樹
情報: 121-83-64-84.eonet.ne.jp


こんにちは、那樹ですw
もしかすると、初めましての方もいらっしゃるでしょう。
この小説は、久遠の夢の涯の続編…というか、過去を明らかにしたものです。
前回の小説「久遠の夢の涯」は、皆様の応援のもと無事完結することができました。
いままで久遠の夢の涯を応援してくださったかた、読んでくださった方、本当にありがとうございました。
こちらでも、久遠の夢の涯の感想は受け付けております。
どうぞ心置きなく感想ください☆(←嘘です、書き込んでくださっても構いません、です

更新暦:四月九日・スレッド作成&序章
四月十八日:第一話更新
     五月三日:第二話更新
     七月一日:第三話更新
     七月八日:第四話更新
    七月十六日:第五話更新
    七月二十日:第六話更新
     八月一日:第七話更新
          スタイルシート&文字色変更
十月二十四日:第八話・第九話更新
   十月二十七日:第十話更新
   十月二十八日:第十一話更新
   十月三十一日:第十二話更新
    十一月一日:第十三話更新
   十一月十八日:第十四話更新

今回の小説は、少女達の20年前のお話。
あらすじは下に書いておきます。
リーヴェン王国の双子王女の姉、ナギサは婚約者のエヴァン=ザードのことが大嫌い。
でも、婚約を破棄することは出来ないのです。
そしてある日、頭にふとひらめいたことが、妹であるサクラの婚約者、ウェイ=ミルガザークと駆け落ちすること。
その駆け落ちは実際に実行された。
駆け落ちに成功したナギサは、そのままウェアギドル王国へと逃走。
残ったサクラも、エヴァンのことを嫌っていて―――??
無理矢理の婚約から逃げ出した王女様と、無理矢理婚約させられた王女様の運命は―――??

ということです。
なんだか、バレバレですねー、ネタが。
視点は、ナギサということですねー。
というか、その時の記憶を持っているのはナギサだけなので、ナギサが視点になってしまうんですよ(笑

それでは、序章を。








あれから、どれくらいの月日がたったことだろう?
あの、とても大切だった妹を裏切った日から
もしも、あの子にうらまれるくらいなら、あの子の記憶を消してしまえば問題はないのかもね
そして、私はただただ自分のわがままを突き通そうとしているだけだったのね―――











序章:母が何を言おうと、王女は政略結婚を拒む




リーヴェン王国、シャルドニア城の王室の一室で。
一人の王女は母に文句を言っていた。

「母様、何ですの、この無理矢理な婚約は!!」

シャルドニア城の第一王女、ナギサが叫ぶ。
彼女はまだ、年が二桁にも達していないほど幼い。
そうであるのに、婚約など彼女は許せない。
そもそも、結婚式を見るのでさえも嫌いなナギサには、自分がそれを挙げることなどありえなかった。

「ま、まぁ、落ち着きなさい、ナギサ。これも、貴方が上へ上へと上がれるように。経済支援も得られるし。そしたら、政治も楽々進むじゃない」

3,2,1,ちゅどーん!!
ナギサの怒りはとうとう最大まで達した。
その達した全てを母に投げかける。

「母様!! 結局はただの政略結婚ではないですか!! 私は、そんなことのために結婚するのは嫌です!!」
「仕様のないことじゃないの、ナギサ。これは国のためでもあるのだから」
「国の為だとかなんだとか知りません!! 私は、自分の人生は自分らしく生きていきます!! それに、この年から許婚など必要ありません。 そもそも、私は好きでこの王女という位に立ったのではありません!!」
「それは分かっているけれど…仕方ないじゃない…」
「そんなの知りませんと何回言えば分かるのです、母様は!!」

ナギサは全て吐き捨てるように言った。
この年から許婚など必要ないし、邪魔になるだけだ。
だが、母はあきらめずに何度もしつこく言う。
ナギサなど無視して。

「ねえ、ナギサ。貴方は何が気に入らないの??」

その質問に、ナギサは完璧な怒りを感じ、即答した。

「何が、何が気にいらないですか!! 全てに決まってるじゃないですか!! 許婚などこの年からは必要ない、むしろ邪魔なだけ、しかもよりによって相手がエヴァンとは…母様も、いい度胸しておられますね!!」

母はそれでもしつこい。
それまでナギサが婚約を結ぶ必要などあるというのだろうか。

「でもねー、母さんは貴方のことを考えて…」
「何が考えているですか!! 何も考えていないから、こんな言葉がすぐに出てくるんじゃないですか!! 母様、貴方には人間と名乗れる器などありません!!」

さすがの母も、この言葉にはプツリと来たようだ。
ナギサに対し、強く言い返す。

「誰に人間の器と名乗る資格がないですって!?」
「母様です」

こんなときにでも、ナギサの声色は変わらない。
変えられないのだろう。
喧嘩を売ってきたのはあちらの方なのだから。

「なら、逆に私から聞きましょう。どうして、サクラではダメなのですか?? 私がこれだけ嫌がるのに、貴方はサクラには何の相談もしていない」

母は、その言葉を聞き、一瞬固まった。
否、一瞬ではなかったのだろう。ずっと固まったまま動かない。

「では母様。お話がないのでしたら、私はこれにて失礼致します」

そういって、ナギサは部屋を後にした。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

「姉さま」

幼い少女の声が耳に止まる。

「サクラね」
「うん」

母と会話している時よりも優しいナギサの声。
否、母にだけ厳しい声なのだろう。

「母様とどんな会話していたの? 姉さまの嫌って言ってた声が聞こえたよ」
「…」

ナギサは返事に困った。
このまま、政略結婚の話をしてしまった方がいいのか、黙っていた方がいいのか否か。

「明日の急な花の庭園会の話よ。私は花に詳しくないから嫌だって言ったの。だから中止になったわ」
「狽ヲぇー!! 残念だなー…」
「ごめんなさいね」

ナギサはあえて、政略結婚の話を出さなかった。
あの時、最後に見た母の顔は苦痛に歪んでいるように見えたからだった。
痛みなどないはずなのに。

「じゃあ、もう寝る時間だわ」
「はーい。じゃあ、おやすみなさい」

その寝室には、電気の切れる音だけが響いた―――


メンテ

Page: [1] [2]

Re: 久遠の夢の涯―――Us of 20 years ago―――( No.9 )

日時: 2007/10/24 21:42
名前: 那樹
情報: 121-83-64-84.eonet.ne.jp




皆様、お久しぶりです。
倉城那樹戒名し、蓮華那樹です。
どうせ那樹であることに変わりはありませんが。
長らくの放置失礼致しました;;
更新致します…!!









消えた婚約者と姉、解けない謎
けれど、ひとつだけ分かるような気がする
ウェイは優しい人だから
逃げると決意した姫を、放っておけるはずがない
もしも、あたしの予想が正しいなら―――お互いに惹かれ合わぬまま駆け落ちしたんだろう―――








第八章:誰も知らない場所で交わされ、誰もいない場所で解消された契約



約束は破られた。
傍で笑っていると、最後まで守り抜くという約束が。
お互いに確認せぬままに消えた。
誰もいない場所で、解消されたのだ。
誰も知らない契約が、誰も知らない場所で解消された。
サクラには、解消される意味がわからなかった。
ナギサについていこうという彼の意思かもしれない。
優しいから、その優しさを利用して逃げたのかもしれない。
自らの妹を捨ててまでも、婚約者との繋がりを断ち切る為に。
何よりも認めたくなかった存在を、切り捨てる為に。
何もかもを犠牲にして―――

「…リディアのところに行かなくちゃ」

自ら言ってしまったことを、打ち消す為に。
同じ立場になるまで分からなくてごめんなさい、と。
そう言う為に。
謝らなければならない彼女の元へ行くために―――重く大きい扉を、姉―――ナギサの部屋の扉を開いた。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

「リディア!!」

部屋に入って第一声、彼女の名を叫んだ。
その声が、届いたかは分からないけれど。

「―――…また貴方ですか」
「理由を求めに来たんじゃない―――貴方に謝りに来たのよ」

そう言ったけれど―――リディアは表情ひとつ変えない。
まるで、何事もなかったように。
それが、当たり前だとでも言うように。
当たり前だと思っていなかったとしても、周りからみれば、そう見えるような表情で。

「一体、何について―――?」
「貴方のこと、分かってあげられなかったこと―――」

サクラが目的を、理由を告げた。
それで、リディアの表情が変わることは、またしてもなかったけれど。

「その為だけにわざわざ―――貴方様のおいでになるような身分でもない者に―――恐れ多い」
「別に、恐れ多くなんてないわよ。だって、姫だって剣士だって、同じ人間じゃない。人間に位をつけるだなんて、間違ってる。あたしたちのせいで、あたしたちと同じ位の歳から働かなくちゃいけない人だっているんだから―――」

その言葉が、リディアの胸に、どのように響いたのかなんて分からない。
でも。
それが、ほんの少しでも、彼女に伝わればいい。

「邪魔したわね。また今度ゆっくり、お茶会でもしましょ?」

そう言い残して―――サクラは、部屋を出た。
まだ帰らぬ姉の、自室から。
自分なんかじゃ届かない場所にいる、王国第一王女の部屋を、後にした。



ねぇ、ウェイ。
貴方にいつか届く日がくるかな。
奇跡が起こるだなんて、信じていない。
でも、今なら少し信じてもいいかな…
たとえ―――禁忌を犯してでも、貴方に届くように―――



メンテ

Re: 久遠の夢の涯―――Us of 20 years ago―――( No.10 )

日時: 2007/10/24 22:16
名前: 那樹
情報: 121-83-64-84.eonet.ne.jp








信じていない奇跡、禁忌を犯してでも守りたい、届きたい人
けれど、そんなこと許されるはずがない
たとえ、それが、リーヴェン王国第二王女のしようとすることであろうとも
身分など、何の意味もないのだから
唯、馬鹿な人類の発端がつけただけなのだから
だから―――この身が何をしようとも―――許されるはずがないのだ―――







第九章:深空の、青き瞳。



シンとした部屋の中。
第二王女は、女闘士を思い浮かべる。

―――あぁ、貴方を味方につけることができるならば、どれほど姉様に近づけるだろう―――

そんなことを考えながら。
王宮でこんなことしてても、何も変わらない。
だから、外へ出よう。
何が起こるかわからない、不思議な外の世界へ。
サクラは、そんな世界へと、足を踏み出した。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

城を出る。
初めて見る植物、景色。空の色、風の音。水音を齎す、蒼き泉。
王宮にずっと住んでいたサクラには、こんなもの見たことがなかった。
―――住んでいたというよりは、閉じ込められていたと言う方が正しいかもしれない。
今日だって、誰かに言付けてきたわけじゃない。
誰に言っても無駄だから、勝手に抜け出してきたのだ。
誰も知らない、秘密の地下通路から。

「これが、泉」

何度も母に見せてもらったことはある。
本物を見たことはないけれど。
サクラは泉の水面にそっと触れる。
そのとき。



繋ガッタ。

別ノ次元ト、繋ガッタ。



そんな声が、聞こえた気がした。
別の次元。
繋がった。
何のことかさっぱり分からない。
でも、サクラは次の瞬間、それを実感することになる。
なんとも言えない力で―――泉の奥へと、吸い込まれていった―――

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

「ここは…?」

ポツリと呟く。
ふと見つけた標識に目をやる。

『帳海』

「とばり…かい…?」

知らない場所へと来てしまったことになる。
どこだか分からない。
誰も居ない。
はずだったけれど。
声が聞こえた。
深空の、青き瞳。
森より深い、蒼の髪。
少年がいた。

「ここは帳海」

少年の声は、落ち着いていて、とても優雅だった。



ウェイ―――どこか、あんたと似てる。
全然違うけど、どことなくそっけない雰囲気が、とても似てるよ。
恥ずかしがって守るって言ってくれてたときとは違う、本当のあんたに似てる。
クールで繊細で、そっけない。
だけど、誰よりもあたしのことを考えていてくれてる。
鈍くて気が利かないあんたとは正反対で、すごく鋭くて気が利きそうな気がするけど。
そんな気がするけど、何故かあんたと似てるって思った。
そっけないだけで似てるって言うんなら、リディアだってそうかもしれない。
でも、何故か似てる気がするの。
なんでそう思うのかは分からないけど。

「あんたは、蒼い渦みたいだね」
「そう、その名の通り、僕は蒼渦」

彼、名を蒼渦。
名前も違う。
喋ってる言語も違う。
何カ国も勉強してきたあたしには分かる。
蒼渦が、ウェイが、なんて話してるのか。
優しくて、だけどそっけないウェイ。
おだやかで、だけどクールな蒼渦。
あんたたちが似てると思うのには、きっと理由があるんだと思う。
でも。
それを考えるのは、また後でもいいかな?
今は―――蒼渦の話を聞きたいから。
青い、綺麗な瞳は、あたしの心を捉えたのかもしれない。
今。
まぁ、でも。
今はそういうことはすべて脱ぎ捨てて。

「あんたの知ってること、全部教えて?」

それが、運命の引き金になるなんて、まだ誰も知らなかったに違いない―――



メンテ

Re: 久遠の夢の涯―――Us of 20 years ago―――( No.11 )

日時: 2007/10/27 21:47
名前: 那樹
情報: 121-83-64-84.eonet.ne.jp








たった一言の引き金
彼女の知らないこの世界のこと
すべては、ここが始まり
始まりと終わりは同じ
ここがすべての始まりであり、終焉である―――







第十章:四大宝玉を管理する者



引き金たる言葉を発したサクラを、蒼渦はしばらく見つめる。
本当に話していいのか、分からないから。
悩みに悩んで返ってきた答えとは。

「今は話せない。君がもっと強く、力を手にすることが出来たときこそ話せるだろう」
「…そう。なら、邪魔したわね」
「気にすることじゃないよ、王女様」


何故、知っているの?
あたしが王女だってこと。
あんたとはまだ会ったばかりなのに。
人間じゃ…ない…?


サクラはそう思った。
会ったばかりの彼は、きっと自分のことを知っているはずがない、と。
しかし、彼はサクラの予想とは異なることを言ってきた。

「帰えれないのかい?」
「そうね。それもあるけど」

サクラが短く言葉を切る。
そして、また呟く。

「教えてくれないからって、帰る必要ないじゃない?」
「それもそうだな」

蒼渦とサクラがかすかに微笑む。
貴方となら、気が合うだろうと。


僕の予想では―――君はナギサの上をいくんじゃないかな。
二つの魔力だけじゃない―――不死鳥(フェニックス)の力すら威圧しそうな瞳。
君ならきっと、不死鳥(フェニックス)だって扱うことが出来る。
動物を手に取るように。
だけど―――今は、二つの魔力を扱えるようにするのが先決だろう。


「君の中には、二つの魔力が眠ってるよね? 風と水の」
「えぇ」
「だけど、君はそれを扱うことが出来ない」
「…」

蒼渦の言っていることが当たりすぎている。
何も知らない赤の他人同士だったはずなのに。
これでは、教えてもらうというより、自分のことについて思い知らされているだけではないのだろうか。
自分が、自分のことを何も分かっていないのだろうと。

「でも―――僕にならそれを扱うことが出来る」
「何故、そういいきれるの? 確かに、あたしには二つの力が眠っているわ。でも、仮に貴方が本当に力を引き出せるのだとしても―――それは、あたしの死と引き換えに、よ。二つの力が均衡を保てなくなると、あたしは死んじゃうんだから」
「それくらい知ってるよ。これを見ても、君はまだ僕には出来ないと言いきれるかい?」

そう呟くと、蒼渦は左手を宙にかざした。
其処には。
水の宝玉―――アイシングフェリメルの腕輪(ブレスレッド)が輝いていた。
その隣には。
母の身につけていたはずの、フェリヴェールの指輪が光っていた。

「何故、其処にフェリヴェールの指輪が―――」
「僕が番人だからさ。四大宝玉すべてを管理する」

風の宝玉フェリヴェール。
水の宝玉アイシングフェリメル。
炎の宝玉セティリアローズ。
地の宝玉デュアルセ。
それらの宝玉をすべて管理するとは―――この国の覇者とも言えるであろう。

「君はただ、この宝玉と契約を交わせばいい」
「誰と契約するのよ。それに、あたしはアイシングフェリメルとしか契約しないわ。いいえ、誰とも契約しないわ」
「何故だい?」
「別に、魔力が使えたってあたしに得なんてないもの」

サクラははっきりとそれを口にする。
そして、元来た空間へと戻る歪(ひずみ)へと歩を進めた。

「また来るわ。この世界のことをもっと知るために」

そういい残し、歪(ひずみ)の中へと溶け込んでいった。


メンテ

Re: 久遠の夢の涯―――Us of 20 years ago―――( No.12 )

日時: 2007/10/28 10:49
名前: 那樹
情報: 121-83-64-84.eonet.ne.jp







四大宝玉、それらを管理する覇者
夢の終わりに、彼らは蘇る―――







第十一章:犠牲など知らない。すべては貴方の為に―――



「姫様っ!!」

サクラの侍女―――リノが叫ぶ。

「ど、どこにいらしたのですか」
「…ちょっとした散歩よ」
「そうでしたか…」

リノが息を切らして問うた。

「姉様は見つかったの?」
「いえ…」

仕方ないのかもしれない。
彼女が自分で決めたことなのだから。
他の誰でもない、彼女自身が。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

「こんなものじゃ足りない…」

漆黒の魔力を手に入れた少女が呟く。
まだ、あの方を納得させられないんじゃないのか、と。

「ねぇ、教えてよ、蒼渦」

助けを乞うように、渦へと話しかける。

「君が、妹を超えればいいんだよ。ただ、それだけ。僕は魔力を持たない者に興味などない。例え、覚醒させてまで手に入れたものだとしてもね」

留めを刺すように、蒼渦が言う。
君では満足できない、と。
そのような器では、存在価値すらない、と。

「でも―――サクラの姉だ。面白い見ものだよ」

そして。

「姉妹同士の血戦(けっせん)は」

そう。
彼の目的は、最初から一つ。
多大な魔力を手に入れることもそうだけれど。
姉妹同士で争いを起こし、どちらかを死に至らせる。
そして―――死んだ者の魔力を奪う。
それしか、最初から考えてなかったのだ。
サクラのことも、ナギサのことも、何も考えていない。
自分が天下統一することばかり考えていたのだ。
きっと死ぬのは。
サクラに違いない。
争いなど、絶対にしないはずだから。
姉様の為なら死ねます、とでも言って。
そして。
この世で唯一人、二つの魔力を一つの身体に共有している少女の魔力そのものを、体内に取り込むことを。
彼は、平気でやりかねない。
犠牲など知らぬフリをして。

「勝つのは私よ。サクラなんかには譲らない。勝負も魔力も―――」

また、呟く。
精一杯の憎しみを込めて。

「貴方の心を奪うのも―――」

魔力があるばかりに、サクラに興味を示した蒼渦。
生まれつき魔力を持たなかった彼女の気持ちなど知らずに。
最初に出逢ったときから。
ナギサの心は、蒼渦に向いていたのだ。
それを邪魔するのが―――自分の妹。
たった一人の、妹。


でも。
殺す躊躇いなどない。
すべては、貴方のために。
他のすべてを捨ててでも。
貴方のためだけに、すべてを捧げ―――
長い髪も切り落とした。
何もかも捧げる為に。
けれど。
何を捧げても、貴方に想いは伝わらない。
サクラが存在する限り。
だから。
自らの妹であろうとも。
必ず、敵は倒す。
そう、唯それだけしか私の存在理由などないのだから―――





メンテ

Re: 久遠の夢の涯―――Us of 20 years ago―――( No.13 )

日時: 2007/10/31 22:08
名前: 那樹
情報: 121-83-64-84.eonet.ne.jp




第十二章:届いた、忠実に仕え続けてきた女闘士の想い。



「姫様!!」

リノが叫ぶ。
昼から慌しく。

「また逃げ出されたのですね…」

サクラは、自室から外へと出ていた。
出ていることよりも、何も言わずに勝手に出て行ってしまったということに、腹が立つ。
たとえ、姫といえども。

「…探すしかありませんわ!!」

そう決意したリノは、外へと足を進めた。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

――帳海。
彼のいた、場所。
話し声が、聞こえる。

「――だから。あの子がエヴァンと婚約するだなんて、間違ってる。何もかも捧げてやっとわかったの。妹を侮辱することなんか、何の意味もない」

そこには。
誰よりも捜し求めていた人がいた。
自分より少し年上の――
実の姉で。
髪も何もかもを捨てた、姉が。
ナギサが―――

「ねぇ…姉、様…なの…?」

サクラが呟いた。
ナギサに向かって。
逃走したはずの、行方不明のはずの、姉に。

「久しぶりね、サクラ」
「姉様!!」
「貴方が望んでも、やっぱり、サクラを殺すなんてこと出来ないわ」
「!!」

二人が同時に息を呑んだ。
何故あたしが殺されるのか、と。
何故僕の願いが聞き届けられないのか、と。

「自分の大切な妹を手にかけるだなんて、絶対に間違ってる!」

ナギサは、昨日とは別のことを言った。
きっと彼女は―――

「どうして、君の考えは変わったんだい?」
「どうして? そんなことも分からないの?」

ナギサはふっと笑った。
貴方、私より使えないわね、と。

「最初は、貴方に利用される為に生まれてきたんだ、って思ってた。でも、今は違う。私を必要としてくれてる人がいて、私を暗闇から救ってくれようとしている人がいてくれる―――」

きっと、ナギサがこう思えたのは。
ほかの誰でもない。
サクラでも、蒼渦でも、母親でもない。
そう、唯一人――ナギサに、忠実に仕え続けてきた女闘士。

「私がこう思ったのは―――リディアのおかげよ。もう惑わされない。私は私の思う道を進むわ」

その言葉に、前言撤回はない。
後悔もない。
今の決意そのままを、表すことば。
リディアは。
一人の王女の心を動かしたのだ。
彼女には、ナギサのことを一番に伝えなければならない。
ナギサは見つかったんだ、と。
貴方の思いは伝わったんだよ、と。

「だから。リディアによろしくね、サクラ。私には、まだやるべきことが残っているのよ」

その言葉は、あまりにも静けさを帯びていた。



メンテ

Re: 久遠の夢の涯―――Us of 20 years ago―――( No.14 )

日時: 2007/11/01 22:15
名前: 那樹
情報: 121-83-64-84.eonet.ne.jp




ねぇ。
最後のお願いだから、聞いてくれるかな。



          ◆          ◆          ◆          


第十三章:あの時約束しましたよね? 私は、必ず貴方を救ってみせると。



「言葉のままよ。最後のお願い。聞いてくれるかしら?」
「…」

蒼渦は無言でうつむく。

「そうねぇ。お願いって言うよりは―――最後のわがまま、かしら?」

ナギサが苦笑して言い直す。
もう最後だから、と。
これ以上貴方にかかわりたくない、と。
このままでは、心が壊れてしまう、と。

「記憶を―――消してほしいの。私とサクラの」
「何故だ?」
「これ以上さ…アンタらを見ていられないんだよ。私だって人間だよ。限界はある」

――貴方を好きになったのも、貴方と出会ったのも、私の方が先だったのに。
サクラ――なんかより。
最初から、ずっとあんたにしか向いてなかったんだよ、って。

「そして―――あんたたちの住むその世界まで飛ばして。あの子だけエヴァンと行くのは可笑しいんだから」

ナギサの声は、サクラに告げたときよりも、静けさを帯びていた。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

「リディア!」

女闘士の名が呼ばれる。
ふと振り向けば――仕えていた貴方の妹君ではないですか。

「姉様が…!!」
「わかっています」

リディアが静かな口調で告げた。
――あぁ、なんて姉様と似た口調なのかしら。

「理由は問い詰めないでくださいませ。あのお方からの――」
「えぇ。分かってるわ。あの子は――あたしを救ってくれようとしてるの」
「そうですね」

流石姉妹だ、とでも言いたそうなりディア。
口にはしなかったけれど。

「きっと、あのお方に届いたんですよ。私の想いが」

あのとき、誓った。
あの言葉を。
貴方に。

          ◆          ◆          ◆          


何があっても、私は貴方の手を離しません。
たとえ、貴方がこの手を振り払ったとしても。
振り払われても、またその手を掴みましょう。
優しく、だけど、誰にも負けない強さで。


只の私利私欲だったとしても、主として貴方に傍にいてほしい。
もしも、貴方が黄泉へと誘われた(いざなわれた)なら、私もその手を取り、引っ張って差し上げましょう。


そして。
絶対に、離さない―――

          ◆          ◆          ◆          


その誓いは。
破られることなく、成就した。
だから、今の彼女たちがいる。
誰も傷つけようとしない、守ろうとする彼女たちが。
いつまでも、誓い続けようとする、忠実な部下の姿が―――


メンテ

Re: 久遠の夢の涯―――Us of 20 years ago―――( No.15 )

日時: 2007/11/18 20:34
名前: 那樹
情報: 121-83-64-84.eonet.ne.jp




第十四章:いつでも、貴方は私の遙か上へといなくなってしまう。



ねぇ。
貴方を好きになったのは、一種の罪かしら?
いいえ。
きっと、仕方のなかったこと。
でも、あの子にエヴァンと行かせようとしたのは―――罪。
紛れもなく。

「わがまま、だなんて分かってる。アンタが聞いてくれないかもしれないってことは百も承知よ」

ナギサは呟く。

「人間、いつかは我慢の限界ってモンが来るんだよ。まぁ―――こんな幼い私が言うのもどうかと思うけどね」
「―――お前が望むのは、それだけか?」
「え―――?」

意味が分からなかった。
何故。
今更、そんなことを聞くのか。
もう、関係ないはずなのに。
アンタとは。
サクラを選んだアンタには、もう私は関係ないはずでしょう。

「さぁ、どうだろうねぇ―――ひとつだけなら、あるかもしれない―――」
「言ってみなよ。僕がその気なのはきっと、今だけだから」
「いや―――いいよ。アンタには随分な迷惑をかけたんだ。もうこれ以上望むことなんかないよ」
「―――」

彼女は、子供だけど子供じゃない。
子供なのは、身体―――肉体だけ。
心は、既に大人。
蒼渦の世界でたとえるなら―――高校生くらいだろうか。
自分のペースを常に保ち、他人に流されないようにする、大人びた心。
それを拒むかのような、幼い肉体。

「(今なら―――…)」

出来るかもしれない。
この肉体を、幼児から大人―――少女へと。
フェリカーヴァの力もってすれば。

「イ・リディオス・フェリスティーガ・ロア・ミルフィーネ・レディス・キグラス・レンティア・フォアロ・ステアロー・デュアルレイ・スティンガル―――…」

詠唱を唱え終わる。
そして、また今度は別のものを呼ぶ。
詠唱ではない、何かを。
ナギサは、昔読んだことのある、一冊の高等魔術の本を思い出す。
多種の魔力を秘める者、あるいは、輝く光に包まれし者、そしてまた、暗黒の闇に心戒められし者。
彼の者に、効果を発揮する呪文。
魔力や精神、肉体の強制進化。
それを覚えるために―――彼女は何度図書館に潜り込んだか分からない。
それくらい、熱心になっていたのだ。

「天神下す罪裁(ばっさい)の師、空還る翼、竜宮払いし水晶、天駆ける魂魄、陽(ひ)に埋もれし宙(そら)、月観る獣―――」

それら読み上げたものを。
今、ここに。
彼女は、呼び出す。

「召来(しょうらい)!!」

呼び出し、また還す。
呼び出しの意味は―――彼女にしか分からない。
いつの間にか。
ナギサ肉体は、15、16の少女となっていた。
凛とした表情で、蒼渦に言う。

「迷惑かもしれない―――だけど、まだアンタが好きだわ。選ばれないのだって分かってる。だから―――」

少し、言葉を切って。
もう一度、口を開く。
とても重い、重苦しい思いで。
もう、これを言ってしまえば、貴方のことは、思い出せないけれど。

「お願い。記憶を消して。もうそれ以外望まないから―――」
「分かった。だから、もう少しだけ待ってほしい。あと―――僅か数秒でいいから」

その数秒は、残酷なくらい、早い。
そして。
蒼渦は、目を伏せる。

「お前の願いを叶える。そなたも、目を閉じろ」

ナギサは、静かに目を伏せサクラを思い浮かべる。
勝手なことをして、ごめんなさい、と。
そう思いながら。
姉として、してはいけないことをしてしまった、と。

「じきに消える。サクラの方は―――」

そういいかけて、彼は口を閉ざした。
いや、正しくは、言葉を紡げなかったのだろう。
なぜなら。

「フ…ェ……ッ………ス…」

震える声で、彼が呟いた。
その言葉の意味を、ナギサはまだ理解できなかった。

「(どういうこと…?)」

彼女には、そう思うことしか出来なかった。


メンテ

Re: 久遠の夢の涯―――Us of 20 years ago―――( No.16 )

日時: 2007/12/15 10:50
名前: 那樹
情報: 121-84-82-247.eonet.ne.jp









天より光臨されし不死鳥
幸を齎すと同時に――それは、禁忌へのカウントダウンにしかならない――









第十五章:「リーヴェン王国の掟に従い、貴方を殺します」



どこかに舞い降りた、不死鳥。
誰も知らない、禁忌。

「な…によ……フェニックスって…」

聞いたこともない、その名を、ナギサは紡ぐ。
否――聞いたことがないわけではない。
昔、歴史書で読んだことがある。

「記憶の侵入にミスが生じた」

蒼渦がポツリと呟く。
誰にも悟られぬように、そっと、小さな声で。

「フェニックスの存在の力は、測り知れないほど大きい。寿命は短いが、な」

蒼渦がナギサに言う。
目を見開くナギサに、蒼渦はまた一声かける。

「フェニックスは、存在の力をこの世全体に示すことが出来る――もう、世界中まで広まっていることだろう」
「そんな…!!」
「フェニックスの力は、とてつもなく強大なものだ。それこそ――四聖獣の魔力をもってでも」

ナギサが拳を握る。
自分が許せない。
妹に禁忌を犯させてまで、消さなければならない記憶だっただろうか。

「記憶を消すには、フェニックスの力を抑えなければならない。それは、たった一瞬でもいい」
「…わかった。私がやるわ」
「出来るかい?」
「さぁね」

こんなに重要な話なのに、サラリと流している自分。
良いわけないのに。
もっと、責任を背負って、話の奥深くにまで踏み込まなければならないのに。

「どうすればいいの? 私の力は、サクラと違って強大で純粋なものなんかじゃない。弱くて醜く汚れた――無粋な力よ」
「その方が都合がいい。同じ種族同士、傷つけあうのはみっともないからな」
「姉妹同士で傷つけあうのもどうかと想うけどね」

ナギサが憎たらしげに、蒼渦に言う。
けれど――選択の余地は、ない。
悩んでたって、解決なんか出来っこない。
守りたければ、行動せよ。
恨みに怨みを重ねた、母に言われた言葉だ。
――貴方は、行動する力があるんだから、一つや二つに迷わず行動なさい――
あの時は、恨んでいたけれど、今は、少しだけ感謝している。

「一度だけ――フェニックスに、君のありったけの力をぶつけてやればいい。姉妹だからといって、手加減はなしだ」
「わかってるわ」
「その一瞬、サクラの気がそれたときに、記憶を消す。そのときは――君も一緒だ」
「わかった」

ナギサが了解を示す。

「貴方も来るんでしょう? シャルドニア城へ」
「ああ」
「一緒に行きましょう。せめてもの慰めとして」

ナギサは、虚しくそう呟いた。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

「貴方…は」

―――我、不死鳥なり―――

サクラの問いに、かすかに声が返ってくる。

「貴方が、禁忌の象徴・フェニックスね」

―――いかにも―――

「あたしは、貴方に魔力を捧げる。代わりに、貴方はあたしを守ってくれる」

―――汝がそう望むならば―――

静かなる王立魔法図書館で、サクラとフェニックスが言葉を交わす。
サクラが、

「じゃあ、契約しましょう。貴方とあたし、きっと気が…――」

そう言おうとした、刹那。
図書館の扉が、勢いよく開け放たれる。
不吉な、予感とともに。

「契約はさせないわ、フェニックス――サクラ」

リーヴェン王国第一王女である、彼女が。
故郷――シャルドニア城へと、帰ってきたのだ。
けれど。
その瞳に、エヴァンなど映っていない。
エヴァンと式を挙げるためにここに戻ってきたんじゃない。
戻ってきたのは、サクラのため。

「リーヴェン王国に定められた掟――身内の不祥事は、身内で始末する」

ナギサは、冷ややかに呟いた。
そして、闘争心をサクラにむける。
倒したくは、戦いたくはないけれど。
フェニックスがいるなら、戦わなければならない。
覚悟を決め、幕を下ろす一言を、呟く。

「リーヴェン王国の掟に従い、貴方を殺します」

蒼渦すら思ってもみなかった言葉に、その場にいた者が、目を見開いた。

メンテ

Re: 久遠の夢の涯―――Us of 20 years ago―――( No.17 )

日時: 2007/12/16 10:53
名前: 那樹
情報: 121-84-82-247.eonet.ne.jp




第十六章:激戦、空を裂く王女の叫び。



唐突に告げられた言葉は、あまりにも儚い。
誰も、そんなこと思ってすらなかったのだから。

「貴方を殺したくなんかない。でも――」

ナギサは、上手く言葉を紡げない。
その言葉は、姉妹の別れを告げてしまうようなものだから。

「私は、リーヴェン王国の、シャルドニア城の第一王女なの。掟に背くことは、私の意志が許さないから」

冷たく放たれた、ナギサの言葉。
姉妹の仲を、引き裂くとどめ。

「分かりました」

サクラが呟いた。
ほかの誰でもない、ナギサに対して。

「けれど、あたしの犯した罪は、何を切り捨てても許されるものではありません。王族であるこの身が、それをよく知っています。罪人の裁かれるところを、ずっと見てきたのですから」

諦めのように聞こえる声、だが。
それは、明らかな敵視を含んでいる。

「だから」

サクラがまだ続ける。

「あたしは、貴方に――貴方達に負けるわけにはいきません」
「…もう、昔には戻れないのね」
「今更ですわ」

もう、ただの姉妹、というわけにはいかない。
今は、仲間でも愛しい妹でもない。

「今はもう、私達はただの敵なのよ、サクラ!!」

ナギサが残酷な引き金を叫ぶ。
それと同時に。

「フェニックス――お願いね」

サクラが、フェニックスとの契約を済ましていた。
予想外に早い契約で、サクラに少しの優位がある。
そして、ナギサと同じように、体系を幼児から中高生くらいに変える。
動きやすくなったというのも、サクラを優位に立たせている。

「でもね、フェニックスだけが力じゃあ、ないわ。たとえ無粋なものだったとしても――魔力だって力よ!!」

フェリカーヴァの種で覚醒させた風の魔力で、竜巻を起こす。
その竜巻には、副作用で芽生えた闇の力も込められている。

「姉様。使えなくとも、あたしが持っているのも、魔力ですわ」
「覚醒出来なきゃ同じこ――」
「流石は姉様。鋭いことですわ。フェニックスには、多種の魔力をコントロールする力が眠っていますもの」

サクラは、フェニックスによって振るえるようになった力を、自在にコントロールする。
もちろん、魔力の暴走はしない。
水と風を交え、氷の力を発する。

「姉様は、氷を弾く力などないはずですわ」

サクラが呟いた刹那、ナギサは唇を噛む。
必死で避けるが、場所は図書館。
王女の名にかけて、書物を傷つけるわけにはいかない。
風を剣と化し、窓を割り、外へとサクラを誘導する。

「ここなら、私にも勝機はあるわ!!」

ナギサは少し笑う余裕を見せたけれど、サクラの呟きを聞き、それが緩む。

「けれど、ここなら、あたしだって力を振るえますわ。最大限、手加減なしに」

そしてまた、先ほどと同じように、氷を生み出し、ナギサを襲う。
氷が大きくなりすぎて、ナギサにも避けれないような大きさになったが。

「サクラ――君が敵視しているのは、一人ではないはずだ」

蒼渦が呟き、炎の宝玉――セティリアローズを翳す。
業火が宙を舞い、氷をあるべき水の姿へと戻す。

「セルディ、ありがとう」
「な、なによ、別に感謝されることなんかやってないわよ」

炎の精霊、名をばセルディ。

「ナギサ」

蒼渦が、その名を呼ぶ。
その声に、どこか懐かしさを感じて、振り向く。
――あぁ、アイツと似てる…
かつての妹の婚約者、ウェイ・ミルガザークと。

「セティリアローズと契約すればいい」
「無茶言わないで!! 私には、契約しても炎の力は使えない」

何故なら。
理由は、ナギサ自身、セティリアローズ自身にある。

「宝玉って主の、契約者の力をより強くするためのものなんでしょ? 同じ属性限定で。でも、私には炎の力は宿ってなんかないわ」
「違う。君の中には宿っていなかったんじゃない。全ての魔力が宿っていたがために、どの魔力も解放できなかったんだ」

全ての、魔力。
四大元素である、水・風・地・炎。
その全てが宿っていたから、解放できなかった。

「そんなはずないわ。全ての魔力が宿っていたなら、風の力を解放したときに、魔力の均衡が崩れて、私は死んでいたはずよ」
「もし、すべての魔力が光、または闇の魔力に戒められていたとすれば、その原理は崩れる」

光と闇は、多種の魔力に影響されない。
その魔力に押さえつけられていたのなら、理解できる。
最初は、その二つの魔力が、四大元素を抑えていた。
フェリカーヴァの種により、風の魔力だけが、解放された。
否、副作用により、闇の魔力も解放された。
けれど、残る光の魔力が、残りの三つの魔力を抑えている。
光と闇は、四大元素よりも、力が強いのだ。

「でも、風と炎が同じように解放されてしまえば、私は死んでしまうわ」

遅い来る氷をセルディに溶かしてもらいながら、ナギサと蒼渦は会話を続ける。

「そんなこと簡単だ。ある魔力が覚醒すれば、ナギサの中に眠る、闇と光の魔力が押さえつけてくれる」
「…ありがと。でも、私は契約はしないわ。そんなにしてまで、この魔術界で――リーヴェンで生きたいわけじゃないんだもの」

ナギサは、それをはっきりと告げる。

「気持ちはありがたいわ。でも、宝玉に頼ってばっかりだなんて、私じゃないもの」

契約をあっさりと断り、告げる。
サクラに同意を求めるようにして、呟く。

「何をやっても、私は貴方に劣りっぱなしだったわ。だからこそ、何の、誰の力も借りたくないの」
「姉様らしいんじゃないかしら」

そう呟きつつ、サクラはまだ攻撃を仕掛けてくる。
それを、ありったけの魔力を込めて、風で返す。
――そうだ、闇の魔力がもしフェリカーヴァの副作用なんかじゃなかったなら…
同じに、光の魔力をも解放できるはず。
自身の中の闇を沈め、光を解放する。
固体である氷は、光を丁度いいくらいに反射させる。
サクラが一瞬、怯む。
その刹那、風の魔力を使用し、神速の如くサクラへと飛んでゆく。
そして、風と混合させた混合魔力を、サクラの胸へとぶつける。
刹那、サクラは悲痛の表情をし、やがてゆっくりと路地へ落ちてゆく。

「サクラ!!」

ナギサの叫びが、空を引き裂いた。

メンテ

Re: 久遠の夢の涯―――Us of 20 years ago―――( No.18 )

日時: 2007/12/16 10:59
名前: 那樹
情報: 121-84-82-247.eonet.ne.jp




最終章:勝利を我が手に、輝きを世界に。



「あたしの負けよ、姉様」

サクラが悔しそうに呟く。
そして、また言葉を紡ぐ。

「掟、なんでしょ? とどめ、さしなよ」
「…」
「あ、でも」

ふと何かを思い出したかのように、サクラが呟く。
いつの間にか、生まれた良心。

「二つだけ、約束していい?」
「…?」

ナギサが、わからない、と表情で表している。
それに少し微笑み、サクラが続ける。

「すべてが終わったら、エヴァンと結婚してあげて。あの子はあの子なりに、姉様のことが好きだったみたいだから」
「…それから?」

ナギサが小声でたずねる。

「ウェイを、お願い」
「あら…二つ、だなんていうのに、貴方は命乞いしたりする気はないわけ?」
「…っはは、じゃあ、約束、二つじゃなくて三つにしていいかしら? 三つ目は、あたしを殺さないで」
「最初に二つって言ったでしょ? だからもうダメよ」
「にゃは、それは残念ね」

最後に、姉妹らしい会話を交わす。
姉妹としていられるのは、これが最後なのかもしれないから。

「覚悟は決まったわ。さぁ、姉様、一思いに…」

ナギサの、風の魔力を秘めた手が、止まる。
風の魔力を解き、内側に戻す。

「最後の願い、聞いてもいいわ」
「え…?」
「一つ目の約束、エヴァンと結婚。これはもう無理だわ。あの子を傷つけすぎたんだもの」

そして、二つ目の理由を、ナギサが告げる。

「二つ目のお願い、ウェイを。これも無理なの。そのうち、私は自分を制御できなくなってしまう。四大元素の魔力に呑まれてしまって」
「そんな…」
「急激に進化しすぎた身体。四大元素を体内に秘めるには時間が長すぎたの。だから、もうじき呑まれてしまうの。覚えていて。今日を境に、ナギサがこの身体に戻ることはない」
「どうしてそんなこと…」
「もし、今後私をみても、話しかけないで。それは、魔力に取り付かれた憎しみの塊だから」

二人のやりとりをみていた蒼渦が、思わず口を挟む。
もう、見てなどいられないから。

「君たちの記憶を消し、人界へと送り込む。その間、魔力の存在は無効だ。それで、いいんじゃないか? そうすれば、君はまたナギサという存在に戻ることができる」
「…そうね、お願い」

もう、覚悟は決まっている。
後戻りは、しない。
だから、人界へと降りる。
サクラとともに降り、別の家庭を築きながら。

「今度会うときも、姉妹がいいね」
「当たり前じゃない、姉様」
「でも、人界では別々よ?」
「分かってますって。では、姉様、お元気で」
「サクラも、風邪引くんじゃないよ?」

最後まで、笑いながら。
二人は、姉妹という仲を引き裂く。
自らの、意思で。
誰に定められた運命でもない、自分たちの道へ。
歩んでいく為に、人界へと降りる。

「ありがとう、蒼渦。人界からでも、アンタを忘れないよ」
「…これ、持って行くといい」
「え…?」

蒼渦の手から渡されたものとは。
炎の宝玉、セティリアローズ。

「ありがたくもらっていくわ。でもあとで返せ、だなんて聞かないからね」

ナギサの呟きとともに、蒼渦が詠唱を始める。
そして、わずか数秒。
とても残酷な、時間。
彼女たちは、記憶を失い、別々の家庭で暮らすことになる。
今までに会った全ての人たちの思いを、胸に刻みながら。
最後まで自分を思ってくれた、女闘士を、思い浮かべながら。



+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++



「おはよ、サクラ」
「おはよう、ナギサ」

姉妹だったことも忘れ、唯の親友として毎日を過ごす。

「ねぇ、ナギサ。それ、何なの?」
「これ? あぁ…」

触れるたびに思い出す、魔術界でのこと。
蒼渦が持たせたことの意味を、セティリアローズに触れて、思い出す。
セティリアローズには、過去を司る能力がある。
触れると、持ち主は過去を思い出すことができる。
サクラはまだ思い出せぬ記憶を、ナギサはセティリアローズに触れて、思い出した。
最後まで自分を守り抜いてくれた、リディアのことも、思い出した。
――リディアを思い出す度、貴方も人界に降りてるんじゃないか、って思うの。
きっと、蒼渦から聞いたはず。
姉妹は、私達は人界に降りたんだ、と。

「代々天野家に伝わる家宝だよ。炎の宝玉。この宝玉には――」

少し、沈黙を取り、呟く。

「炎の精霊・セルディが眠ってるって伝えられているの」

昔出会った精霊の名を、ナギサは静かに呟いた――


                 fin


この小説、「久遠の夢の涯―――Us of 20 years ago―――」は、完結しました。
那樹は、去年同様に、四国へと帰省するため、その期間は更新することが出来ないからです。
どうしても今年中にこの小説を完結させたい、という那樹自身の強い願望から出た行動です。
前回(久遠の夢の涯)と同じく、勝手な予告なしの完結すみません。
これはすべて、私が決めたことであり、この小説を書くのが嫌になった、というわけではありません。
今日からまた、新しいスレッドを開設します。
午後9:30。
このスレッドはロックします。


メンテ

alt 書けませんよ。。。 ( No.ThreadStop )

日時: 2100/01/01 00:00
名前: read.cgi

真・スレッドストッパー。。。( ̄ー ̄)ニヤリッ
このスレッドはスレ主がロックしたか、管理者がロックした可能性があります。
65 KB

Page: [1] [2]